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麻田浩と自由の森学園高校生との対話

ハイドパークミュージックフェスティバルを手伝ってくれた高校生達と音楽について話してみた

自由の森学園にはHydepark Music Festival開催前から、校内にポスターを貼ってもらったり、フェスの当日も生徒達に現場の手伝いをしてもらったり協力してもらった。そもそも僕が自由の森学園を知ったのは、2005年のハイドパークに出演してもらったSAKEROCK(星野源/浜野謙太/伊藤大地/田中肇)が、「僕ら学校が西武線沿線の飯能だったので稲荷山公園は馴染みがあるんです」と言っていたから。

実際に訪れたのはこの日が始めてだったが、通学は大変だろうなと思うほど、西武飯能駅からは遠く、本当に森の中にあった。事務局の女性が、窓口になってくれた美術科の田上先生のいる美術室まで案内してくれる際に、「私は2005年のハイドパークに行きました。当時はもう自由の森学園に勤めていたのですが、最高の思い出です。今日麻田さんがいらっしゃるって聞いてびっくりしました!」と言ってくれた。

会場のアトリエには、MC5のTシャツを着た長髪の田上先生と、高校生無料キャンペーンでフェスに参加してくれた生徒達を中心に軽音楽部の生徒、十数人が集まってくれた。3時間弱話したのだが、途切れることがなく話が弾んだ。

彼らとの対話で僕が最初に投げかけたのは、「みんなにとって音楽ってどんな存在?」

自己紹介がてら、参加者全員に話してもらったが、音楽は彼らにとって日常生活の一部であり、感情や気分を表現する手段になっていて、下記のようなさまざまな回答があった。

  • 子供の時に縁があってウクレレを弾き始め、コンテスト荒らしになった。また父親の影響でベースを演奏し、ジャズに傾倒している
  • 常にイヤフォンを使用して音楽を聴き、スケートビデオや友人の洋服屋で流れる曲から新しい音楽に出会い、
  • パーシースレッジなどがおすすめ。スケボーやっているのでスケートビデオで使用されている音楽をよく聞いて
  • 気になった曲はすぐYoutubeチェック。
  • メロディーやリズムが良い曲に惹かれ、音楽は、その時のタイミングやシチュエーションに合わせて選んで聞いている。
  • 音楽を心のリセットボタンとして使用し、不安やストレスがある時に聴いて落ち着いて、気分を切り替える。
  • 流行り物よりも友人の口コミで好みの音楽に出会うことが多い。友達に勧められた曲やアーティストは、すぐスマホで調べて、自分に合う、合わないを決めている。最初はYMOのインストを聴いたりしていて、最近ではそこから細野晴臣の日本語の曲を聞くようになった。
  • 僕はYMOきっかけだけど、友人はKing Nuきっかけで色々な音楽を聴くようになった。
  • 母親が車の中で流していた音楽から影響を受け、フィッシュマンズや洋楽のバンドを聴くようになった。

はっぴいえんどはエモい?

彼らの口から、よくYMOやはっぴいえんどや細野君の名前が出てくるのは、なぜなんだろう?
細野くんって最近は、フォークっぽいオールドタイムっていうか古っぽいものやっているけど、そういうのもいいなーって思うのか?古いことやってるなーって思うのか?どう思っているんだろう?

まず一人は、

「僕たちの中に、懐古主義見たいのがあって、昭和歌謡とか、昔の音楽や、昔のもの、アナログレコードやフィルムカメラとかの文化がまた見直されているんです。レコードでしか音楽を聞かないって人も僕の周りにいます。僕も音楽はサブスクで聞かないで、必ずCDを買って聴くし。そういのもあってはっぴいえんどの時代の音楽がちょっとエモいっていう、昔のものにロマンを感じたりしていて、それではっぴいえんどとかも聴いたりするんだと思います。僕のお母さんなんかは、このバンドがエモいって言ってもわからないんですけどね。

「2、3世代前のレトロっぽいものに今の世代はエモーションを感じて、はっぴいえんどを聴いたりするんだと思います。日本語の歌詞だし。僕たち(自由の森学園の生徒達全般)は、メインストリームで流行っている、あいみょんや、髭男は聞かないですね。音楽を掘り下げて聴いている人たちがこの学校には多いので、マニアックなものの話題で盛り上がります。自由の森学園の生徒達は、みんな必ず一般に流行していないけど、すっごくかっこいいバンドとかを知っていて、教え合っています。」

こんな意見もあった。

「最近、細野晴臣『HoSoNoVa』を聴いたんですけど、そのきっかけが細野晴臣さんが青葉市子さんと一緒にやっていた、悲しみのラッキスターを聞いたことでした。あと星野源の曲。星野源が歌詞を書いて、細野さんが曲で共作していたので。それから細野さんのチャップリンのスマイルのカバーなど、細野さんの新しいチャレンジなのかと思いました。」

細野君が若い人たちと積極的に一緒に番組やったりしているけど、それを見ている若者達に、興味持ってもらうことに成功しているってことだ。

サブスク時代のの音楽の聴き方は?

僕は、サブスクだとせっかくアルバムで作った世界観が伝わらないのでは?って思っているんだけど、みんなどんな聴き方をしているんだろ。僕が子供の頃は、テレビでかかっていた浪曲や歌謡曲とラジオから流れてくる音楽が耳にする音楽の全てで、FENで聞き取ったアーティスト名や曲のタイトルを頼りに銀座や渋谷のレコード屋に45回転のレコードを探しに行って、それをプレイーヤーで聴いていたんだけど、今はYoutubeやサブスクだけなのかと思いきや?

学生達の話:

  • 僕は未だにCDを買って聴いています。サブスクでは聴かないです。
  • カセットテープやアナログレコードを聴いている友人も本当にます。
  • 僕は、アルバムを季節で捉えて、このアルバムこの季節に聞きたいってうのあるって、季節ごとに曲を選んで聴いたりします。
  • 僕はYMOのライディーンから入ったんで、そればかり聴いていましたが、YMOのアルバムをちゃんと聴いてみたくなって全曲聞くようになりました。
  • レコードプレイヤーは、持っていないけど、レコードってA面とB面あるので、自分はA面の一曲目からA面の最後の曲まで聴いて、B面の最初の曲に行くっていうようにサブスクでも聴いたりしますよ。レコードをプレイヤーに乗せて、A面が終わったら、B面にひっくり返してと音楽を聴くための一連の行動や音楽を聴く儀式をプレイヤーはなくても再現してます。
  • 折坂悠太「平成」っていうアルバムは、とても完成されていて、一曲目の「坂道」から2曲目の「逢引」3曲目の「平成」まで曲間から曲の流れも全てが完璧で、今一番来てほしい時にイントロが始まる。みんなこれ結構好きです。
  • ただ実際は, 最近はギターソロやイントロを飛ばして聴いたりする人が多いです。歌から、サビから聴きたいので。
  • Youtubeは気になった曲やアーティストの確認用です。

驚いたことに、彼らは環境が許せば、ステレオでアナログレコードに針を落として聞きたいと思っているような子たちだ。最近の若い子たちは、音楽にお金使わないようになっているって聞いていたが、彼らは、CDを買ってアーティストに還元したいと言っていたし、ライブやコンサートにチケット買って行ったりもする。ブルーノマーズの抽選に落ちたとか、えっ?と思ったけど「ずっと玉置浩二のライブに行きたいんですが、チケット取れなくて行けないんですよ。玉置浩二と東京フィルハーモニー交響楽団のコンサート行きたいです」自由の森学園では玉置浩二は人気があるようだ。彼らの音楽と出会う、または好きになるキーワードは、メロディーの良さ、カッコイイリズム、タイミングとシチュエーション、記憶、気分、瞬間などだ。

ハイドパーク2023に出ているアーティストは知っている?

さすが、自森の学生だけあって、踊ってばかりの国が好きなので、他の出演者も大体知っていたという子もいたし、知っているバンドは少なかったけど、音楽自体好きなので行きたいと思っていた。おそらく正直な気持ちで言ってくれていると思うが、参加してよくわかったけど、他のフェスと比べるとハイドパークのラインナップはすごく良い、高校生無料っていうことが最初からわかっていたら、もっとたくさんの高校生が参加すると思ったって言ってもらえた。

音楽活動をしている若者の現代ならではの不安?と日本音楽業界の課題

実際に音楽活動をしていて、アーティストを目指している彼らから、「今の時代、アーティストってどうやって成長すればいいんですか?」という質問もあった。

この質問は、プロのレコード会社や事務所も同じ悩みを持っているかもしれない。

今の時代音楽がこれだけ溢れている中で、CDを作っても売れない時代に、ゼロから音楽アーティスト目指している人たちは、どのように成長していけばいいのか?自分の色をどう出していくか、選択肢が多すぎて、正解がわからないということだ。仲間と集まって、曲作って、音源レコーディングして、ライブでをやりながら、配って行くってその考えから抜けられないしそうやっている仲間も多いけど、今の時代、そんなこと地道にやっていても、売れる兆しはなかなか見られないということだ。

僕は、音楽制作を始める過程で、自分は日本国内で売れることを目指すのか、グローバルに発信していきたいのかを、自分で選べる時代だと思う。そこを見極めて意識して活動していくことで、自分の正解が見えてくると思う。自分の経験でも、長年日本で全く売れずメジャー契約を切られたPizzicato FiveがNYのフェスに出演したことで、マタドールレーベルと契約し、瞬く間に欧米でヒットしそのフィードバックで日本でも知名度を上げることができた。

あとはいい曲を作り続けることだ。日本は才能ある未完のアーティストが多いのに、残念なことにそれを正しく評価するして世の中に紹介していくジャーナリズムとメディアがない。その部分は今や一般音楽愛好者達が担っている。アメリカやイギリスはエンタメメディアやジャーナリストが若いアーティストの才能を評価し、エンタメ業界を上げてそれを歓迎して世の中に出して、グローバルなビジネスにしていくのがうまい。そこは見習っていきたいと思う。

音楽の力やハイドパークの魅力や可能性を再認識できた

この対談を通じて感じたことは、今時の若者像が読んだり聞いたりしていたのとは、全く違ったと言うことだ。

「今の若者は携帯やゲームにしかお金使わないですよ。CD買う人はもういませんよ。」
「お金がないからコンサートのチケット買ったりしませんよ」

っていうのがよく聞く若者のイメージだった。それは今回の対談相手が、自由の森学園という生徒一人一人の意見を尊重し、自主性を重んじ、試験ではなく、考え方や行動で生徒を成長させていく学校に通っている特別な若者達だからかもしれない。自森を卒業した親が子供達を自森に入学させているそうだし、音楽好きは親譲りかもしれない。裕福な家庭の子が多いそうだから、お金を音楽に使う余裕があるのかもしれない。だからカセットやCDやアナログレコードも買うことができるし、コンサートのチケットも買えるのかもしれない。

それでも彼らが、僕ら世代と近い距離感で音楽に接しているって知ることができて嬉しかったし、サブスクが単なる音楽に触れる選択肢の一つでしかないなら、僕の子供の時のラジオやテレビと同じじゃないか。様々な気付きがあったし、自分の孫くらいの世代の彼らが、自分の意見を堂々と言って、他人の意見にもよく耳を傾ける音楽が大好きな彼らとの対談は実に楽しいものだった。ハイドパークがシニア層だけのフェスではなくて、高校生にも魅力あるフェスだって言ってくれたこともうれしかった。今後も意見交換していきたいと思う。

麻田浩

協力:自由の森学園 生徒の皆さん/軽音楽部顧問 田上先生/事務局 則松先生/イーノマヤコさん


参考Link
悲しみのラッキースター 細野晴臣(feat.青葉市子)

「夏の終りのハーモニー」玉置浩二

折坂悠太 – 平成

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